<天童いじめ自殺>闘病の父、報告待たず死去
「娘はなぜ死を選ばなければならなかったのか」
女子生徒の死後、問い続けてきた父親が9月9日、第三者調査委員会の報告を受ける直前にがんのため亡くなった。45歳だった。
自殺直後、娘の部屋からいじめを記したノートを見つけた。
「陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ。私ヲ、『生』かしテヨゥ」
命を救えなかった自責の念にも駆られながら、事実関係の把握に動かない学校に対し、ノートの存在を伝えて徹底した調査を求めた。全校生徒に対するアンケート前には全校集会に出席し「本当のことを答えてほしい」と強く訴えた。
真実を知りたいという思いは、学校、市教委側との衝突につながった。第三者委に中立、公平性を求め、設置要綱と委員の人選に妥協はしなかった。
父親は取材の度にうつむきながら話した。「娘のことを考えない日はない。喪失感はいくら時がたっても消えない」。いじめの実態が「闇へ葬り去られるのではないか」と恐怖感も吐露していた。
いつも手には資料をまとめた膨大なファイル、幾度も読み返し無数の赤線が引かれたいじめ防止対策推進法の解説本があった。
ことし春から病状が悪化し、痛みに顔をゆがめる瞬間も多かった。初夏に会った際には「納得のいく調査結果を見るため、頑張りたい」と気丈に話していた。
第三者委が9月28日、いじめが自殺の主な要因と認定した報告書の概要を母親に説明した時、共に闘ってきた父親の姿はなかった。(山形総局・伊藤卓哉)
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いじめを受けていた天童一中(山形県天童市)1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、第三者調査委員会は5日、「いじめが自殺の主要な要因」と明記した報告書を天童市教委に提出した。いじめと自殺の因果関係を認め、学校の対応を「情報が共有されず組織として機能しなかった」と厳しく指摘した。