青森県風間浦村長を務め、56歳の若さで3日に急逝した飯田浩一さんのひつぎが6日、村の一般職員が運転する霊きゅう車で火葬場へと運ばれた。職員が霊きゅう車を運行する事業は、飯田さんが行政改革の一環で始めた。生前、職員の意識改革を強く訴え、それを実現するための村長発案事業の一つだった。
霊きゅう車の運行サービスは、2014年4月に開始した。総務課と村民生活課の職員が担当し、年間約40件、これまで100人以上を搬送してきた。
6日にあった遺体搬送の当番は総務課で、竹村勝久さん(50)が担当した。運行業務は職員の輪番制だったが、当番外の竹村さんが役目を買って出た。
村にとって通常の行政サービスでも、村長車の運転手も兼務してきた竹村さんにとっては、飯田さんを乗せることができる最後の日。自宅前で手を合わせ、ひつぎを車に載せると長いクラクションを1度、鳴らした。
飯田さんは生前、「紙切れ(採用通知)1枚で採用された職員に、村民一人一人の命の重みを感じてほしかった」と話していた。
元々、村民に村の霊きゅう車を使った搬送業務を委託していたため、財政削減効果は年間数十万円程度にしかならない。
「それよりも意識改革が大事。仕事を頑張らなくても、明日の飯に困らない役人根性を変えたかった」というのが飯田さんの本心だった。
職員の意識改革が功を奏し、全国的にも例がない国民健康保険税の平均10%引き下げを実現した。職員による戸別訪問の強化で、7割ほどだった収納率が9割近くまで上昇したことが大きかった。
「やればできることがまだまだある」の言葉を残して逝った飯田さん。職員による霊きゅう車運行が継続されるかどうかは、50日以内に選ばれる次の村長の判断に委ねられる。