ヤフーサイトに、今日のこのブログに上げた乙武さんに関しての、法律的観点が載っていました。
乙武さんのツイートによれば、予約していたイ タリア料理店に「車いすだからと入店拒否され た」とのこと。エレベーターが止まらない階に 店舗があるため、店員に下まで降りてきて抱え てもらえないかと頼んだが、断られてしまった そうだ。ツイッターで61万人のフォロワーをも つ乙武さんが、この出来事について「銀座での 屈辱」とツイートすると、ネットユーザーが店 を一斉に批判。店主がツイッターで謝罪する事 態となった。
たしかに、公共空間の一つである飲食店には、 障害者を含めたすべての人が過ごしやすい環境 が求められているといえるだろう。だが、すぐ には対応できない事情がある店舗もあるはず だ。では、今回のケースのように、車いすでの 入店を断ることは、なんらかの権利侵害にあた るのだろうか。また、「車いすの客はお断り」 などの掲示をしておけば、入店を拒否できるの だろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●障害者基本法は「障害を理由とした差別」を 禁じている
「憲法14条は、法の下の平等をうたっており、 障害者基本法4条は、『何人も、障害者に対し て、障害を理由として、差別することその他の 権利利益を侵害する行為をしてはならない』と 規定しています」
秋山弁護士はまず、憲法と障害者基本法に言及 して、障害者に対する差別が禁じられているこ とを示す。では、障害者を不当に扱うと、ただ ちに違法になってしまうのだろうか。
「憲法14条は、今回のような民間の問題に直接 適用されるものではなく、障害者基本法4条 も、多分に理念的な規定ではあります。ただ、 これらの規定の趣旨に照らし、民間の問題で あっても、障害を有することを理由とした不合 理な差別を行えば、人格権を侵害する不法行為 (民法709条)として、損害賠償義務を生じさ せることがあり得ます」
「障害を有することを理由とした不合理な差 別」とは、具体的にどんな場合が考えられるだ ろうか。
「たとえば、店内のスペースの広さなどから、 物理的には車いすの客でも十分に利用可能であ るにもかかわらず、『車いすの客はお断り』と いった掲示を出して、車いすであることを理由 に一律に入店を拒否するようなケースが考えら れます。そのような場合には不法行為として、 損害賠償を請求される可能性があるといえるで しょう」
●店側の言い分にはそれなりの「合理性」があ る
では、今回の乙武さんの「入店拒否」は、その ような「不合理な差別」にあたるのだろうか。
「今回のケースでは、店側は障害者であること を理由に一律に入店拒否をしているわけではな く、事前に車椅子であることを連絡してもらえ れば対応するが、事前に連絡してもらえないと 物理的に対応が困難である、と言っているよう です。そうすると、店側の言い分にはそれなり の合理性があるものといえ、障害を有すること を理由とした不合理な差別とまでは言いにくい ように思います」
このように秋山弁護士は分析している。また、 乙武さんの主張についても、次のように冷静な 見方を示している。
「乙武氏も、店の対応が違法と言っているわけ ではなく、店側の接客業としての対応や言い方 を主に問題にしているように見受けられます」
ネットユーザーを紛糾させた今回の事件だが、 障害者に対するサービスはどのようにあるべき かを、改めて考える機会としたいものである。