日本相撲協会は26日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、弟子の暴力行為が発覚した伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)が理事辞任届を提出し、受理したことを発表した。 調査したコンプライアンス委員会によると、幕下以下力士A(以下A)が、弟弟子である被害者の幕下以下力士B(以下B)に対し、今年4月下旬頃~8月上旬頃までの約5か月の間に3度の暴行が確認された。AのBに対する暴行は、4月下旬頃に稽古場で腕立て伏せ用の補助具(角材)で1回殴打。7月上旬頃には名古屋場所宿舎のちゃんこ場において、腹部を4~5回げんこつで殴打した上に、うずくまったBの腹部を2度ほど足で踏みつけた。さらに、同年8月7日頃には部屋のちゃんこ場において、ちゃんこの湯を背中にかけ、やけどを負わせたという。 またAとは別の幕下以下力士C(以下C)もBに対し、7月上旬頃に名古屋場所宿舎のちゃんこ場において、腹部等を4~5回げんこつで殴打していた。 同委員会はAを協会員として残す選択肢はないと言わざるを得ないとし、引退勧告の懲戒処分が相当と判断した。一方、Cについては兄弟子Aに触発されて偶発的に暴行に及んだ側面があり、暴行直後にBに対して謝罪。いかなる処分も受ける態度を示し、真摯に反省している事情などを鑑(かんが)み、将来性も考慮し、出場停止処分相当と判断した。 また、師匠・伊勢ケ浜親方はAがBにやけどを負わせた事実を把握しながらも、協会へ報告せず。以前には弟子の横綱・日馬富士(当時)の暴行事件を防げなかったこともあり、過去の経験を教訓とすることができていないと言わざるを得ないとし、暴力根絶を誓う協会の理事職は不適当とし、降格の懲戒処分(評議委員会に対する理事解任決議の上申)が相当と判断された。 この日行われた臨時理事会では、同委員会の処分案を踏まえ、Aは引退勧告の懲戒処分相当であることを確認した上で、引退届を受理して処分なし。Cは懲戒処分の2場所出場停止(初、春場所)。師匠の伊勢ケ浜親方については、降格の懲戒処分相当であることを確認した上で、理事辞任届を受理して処分なしとした。 協会は全協会員に対し、暴力は絶対にしてはならない旨を通知すると共に、12月27日開催予定の年寄総会で師匠・年寄に対して、厳しく弟子の行動を指導・監督すること、万が一暴力が発覚した場合に報告を徹底することを通知するとした。また、来年2月に実施する協会員研修で暴力問題撲滅への啓発を行うという。